横溝正史シソーラス(パイロット版) - 温故知新編 -
| 5-04 | ○『横溝正史 評論と研究』 |
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「推理小説研究」十七号（昭和五十八年九月）に、山 村正夫が「横溝正史の創作ノート」を発表している。長 編「仮面舞踏会」執筆に当たり、横溝正史が山村正夫 にあてた書簡が、「創作ノート」として紹介されている。 注目に値する文献である。残念ながら、この文献を収録 した刊本はない（筆者の知る限りだが）。 近頃とみに気になることがある。例えば、江戸川乱 歩には『江戸川乱歩 評論と研究』（講談社、昭和五十 五年六月）、『乱歩文献データブック』（名張市立図書 館、一九九七年三月）といった、文献目録が充実したも のがある。戎光祥出版『横溝正史研究』（全六巻）が刊 行されてはいるものの、そろそろ『横溝正史 評論と研 究』が出てきても、良いのではないだろうか。絶版・未 収録作品の刊行にスポットライトを当てるだけでなく、 横溝文学の周辺分野についても世に知らしめて、横溝正 史の人なり作品なりが、再評価されることを切に願う。 新聞や雑誌に掲載のみとなっている、横溝正史関連の 特集記事や評論などを、一冊の刊本にできないものだろ うか。一九七〇年代の横溝ブームの頃はもちろんのこと、 今までに横溝正史に関連した新聞・雑誌記事や作品論・ 作家論は、相当数に上るはずである。雑誌掲載作品など は、未収録作品集の例などのように、刊本になる場合が 多い。しかしながら、特集記事や評論はそれぞれのペー ジ数も少なく、雑誌発表のままで終わるケースがほとん どである。横溝正史に関しても例外ではなく、雑誌掲載 留まりとなっているものが実に多い。掲載誌を所持して いたり、入手できればよいのだが、約三十年前の雑誌 入手は、容易ではないというより困難である。個人的に、 図書館などで閲覧するにも限界がある。 横溝正史関連の特集記事は、横溝書誌調査の観点から だけではなく、これらが発表された年代の世相を知る上 でも、貴重な資料となるに違いない。また、さまざまな 方々の「横溝正史論・私観」についても、同様である。 こちらも、全集月報や雑誌などに散りばめられたままと なっている。こういった事情を鑑み、新聞・雑誌特集記 事や評論を、一冊の本に編めないものかと思うに至る。 ニーズとしては少ないのかもしれないが、横溝正史再評 価には必要不可欠な資料となるに違いない。刊本化の実 現を切望する次第。 |
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