横溝正史シソーラス(パイロット版) - 温故知新編 -
| 3-30 | ○横溝正史の自薦ベスト |
| 3-30 |
「横溝正史が生前自ら厳選した傑作集！」という惹句 を掲げ、「横溝正史自選集 The Author's Self-Selected Masterpieces」と冠し、二〇〇六年十二月から二〇〇七 年六月にかけて、「横溝正史自選集」全七巻が出版芸術 社より刊行配本された。 そのラインナップは以下の通り。 １巻：本陣殺人事件 ４巻：犬神家の一族 蝶々殺人事件 ５巻：悪魔が来りて笛を吹く ２巻：獄門島 ６巻：悪魔の手毬唄 ３巻：八つ墓村 ７巻：仮面舞踏会 横溝正史は自薦ベストについて、幾度か言及している。 以下、掲載紙ごとに自作ベストテンを紹介する。 １．本格派の巨匠横溝正史が語る“わたしの10冊” （「プレイボーイ」昭和五十年十月二十八日号） １位：本陣殺人事件 ６位：仮面舞踏会 ２位：獄門島 ７位：人形佐七シリーズ ３位：悪魔の手毬唄 ８位：百日紅の下にて ４位：八つ墓村 ９位：真珠郎 ５位：蝶々殺人事件 10位：髑髏検校 ２．私のベスト10 （毎日新聞社『真説 金田一耕助』収録） １位：獄門島 ６位：悪魔が来りて笛を吹く ２位：本陣殺人事件 ７位：仮面舞踏会 ３位：犬神家の一族 ８位：三つ首塔 ４位：悪魔の手毬唄 ９位：女王蜂 ５位：八つ墓村 10 位：夜歩く （ただし、８、９、10位は文庫の売れ行き順） ここで一点、補足をしておきたい。 出版芸術社「横溝正史自選集」では、『真説 金田一耕 助』（毎日新聞社／昭和五十二年十二月）収録の「私の ベスト10」記載作品を収録している。 まずは、（１）獄門島、（２）本陣殺人事件、（３） 犬神家の一族、（４）悪魔の手毬唄、（５）八つ墓村の 五作品である。実際には、田中潤司が選ぶ金田一耕助物 のベスト５なのだが、横溝正史も「このベスト５はいたっ て妥当であると思われる」と同意している。さらに、 「以上につづく作品はなんだろうと考えてみたが」とあ り、「悪魔が来りて笛を吹く」「仮面舞踏会」が挙げら れ、その後は「文庫の売れ行きからいくと、「三つ首塔」 「女王蜂」「夜歩く」の順」らしいが、「ベスト10に入 れるとなると躊躇せざるをえない」と述べている。 では、どうして「蝶々殺人事件」が自選となっている のかというと、「「蝶々殺人事件」縁起Ⅲ」の項で、ベ スト10に「蝶々殺人事件」を「金田一耕助物という範疇 にこだわらなければ、もちろんこの作品も入れたいと思 っている」と、記されているからであろう。「傑作ベス ト８」、心憎いばかりの収録作品である。 ３．作家の自選ベスト５ 本格派横溝正史 読者をアッと いわせる１＋１＝３の論理に挑む男 （「プレイボーイ」昭和五十三年八月二十九日号） ・獄門島 ・本陣殺人事件 ・蝶々殺人事件 ・悪魔の手毬唄 ・蔵の中 このほかに他薦として、『東西ミステリーベスト１０ ０』（文春文庫／一九八六年十二月）に、横溝作品五作 がランクインしている。 １位：獄門島 44位：八つ墓村 ７位：本陣殺人事件 69位：蝶々殺人事件 42位：悪魔の手毬唄 なお、現物未確認ではあるが、ここで紹介した以外に も、横溝正史は「殺人と推理代表作４」（「週刊プレイ ボーイ」昭和五十一年十一月三十日号）と「推理作家が 選んだ３冊の推理小説」（「サンデー毎日」昭和五十二 年十月九日号）で、自薦ベストを挙げているとのこと。 横溝正史自薦ベスト作品については異論ない、せっか くなので、My Best YOKOMIZO を考えてみた。 まず、「女の墓を洗え」と「千社札殺人事件」を挙げ たいと思う。「悪霊島」の後に予定されながら未執筆と なった作品で、どんな内容になる予定だったのか、想像 するだけで楽しくなるという意味から、マイベスト横溝 とした（この二作に関しては、別項目で作品プロットを 読む試みを行っている）。 それから、石上三登志「金田一耕助本当に最後の事件」 （「奇想天外」昭和五十三年十一月号）で語られる、 「獄門島ふたたび」もベストから外せない。「病院坂の 首縊りの家」の結末で語られる、放浪理由の物足りなさ からできた、面白い趣向のフィクション・エッセイで、 「金田一耕助最後の事件」と同時に「由利先生最後の事 件」になっている（由利先生の奥さんや「獄門島」の鬼 頭早苗に関する説明がなく、二人の行く末が案じられて ならない。 |
｜総目次｜各部目次｜Previous｜Now here｜Next｜
 横溝ペディアへ |
 総目次へ |
 ページの先頭へ |