横溝正史シソーラス(パイロット版) - 温故知新編 -
| 3-17 | ○中絶作品「黒衣の道化師」 |
| 3-17 |
『横溝正史研究５』（光祥出版／二〇一三年三月）の 「新資料・文献紹介」コーナーで、横溝正史の「黒衣の 道化師」という中絶作品が紹介された。 紹介記事によれば、野球画報社の雑誌「少年野球画報」 昭和二十五年陽春創刊号（四月発行）に掲載され、連載 第一回のみで中絶したと思われるとのこと。作品紹介文 には「道化の仮面を残していく神出鬼没の怪盗黒衣の道 化師とは何者？ クリスマスの夜、ダイヤモンドをめぐ って大活劇がくりひろげられた！」と合わせ、「変幻幽 霊盗賊」第一話の「怪映畫撮影の巻」のリライトである 旨、記されている。 連載第二回以降に関する情報を求め、筆者が運営する ウェブサイトで「「黒衣の道化師」ウォンテッド！」と いう記事を書いて情報提供を求めたが、これといった反 応はなかった。 久しく単行本未収録だったが、横溝正史生誕一二〇周 年を目前にした二〇二一年九月、柏書房の『横溝正史少 年小説コレクション４ 青髪鬼』へ収録された。未完作 品の「皇帝の燭台」と「黒衣の道化師」を筆者に読む機 会を与えてくれた同書には、感謝しかない。読むことが 叶わないかと天を仰いだ、初出誌を探求した数十年前が、 隔世の想いである。 こちらの巻末解説を読むと、掲載雑誌「少年野球画報」 は創刊号のみで休刊・五月号以降の発行は確認されてい ないことと、昭和三十三年に発表された「まぼろしの怪 人」第一話「社長邸の怪事件」にも、ほぼ同じ形で流用 されていることが分かる。 「黒衣の道化師」の改稿版と称される「まぼろしの怪 人」も、『横溝正史少年小説コレクション６ 姿なき怪 人』（柏書房／二〇二一年十一月）で読むことができる ので、両作を読み比べてみるのも一興であろう。 |
｜総目次｜各部目次｜Previous｜Now here｜Next｜
 横溝ペディアへ |
 総目次へ |
 ページの先頭へ |