横溝正史シソーラス(パイロット版) - 温故知新編 -
| 3-11 | ○俳人にして歌人 |
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横溝孝子夫人は歌人として、句集『花筏』（私家版。 昭和五十一年四月）と『二人静』（私家版。昭和六十二 年七月）を出されており、その中には、夫・横溝正史の ことを詠んだ句が多数編まれている。 例えば、 冬籠る夫の火桶のさし煙草（『花筏』より） 先に落ちせせらぎに待つ冬椿（『二人静』より） 横溝正史自身も俳句や短歌を嗜んでおり、正史自身が 詠んだ歌も多数、確認されている。文献で紹介されたも の、作品中やエッセイ内で詠んだものには、以下のよう なものがある。 神風を祈る心よ仇なれや たのまず我は爪で耕す（終戦 時。山村正夫「怪奇ロマンの本格派の巨匠」にて言及） 元旦や今年は何んで年をとる（昭和二十二年一月一日。 横溝正史「桜日記 第二部」より） 「桜三吟」（昭和二十二年十一月十五日。連歌：横溝 正史・江戸川乱歩・西田政治） それぞれの花ありてこそ野は愉し（昭和二十三年一月 二日。横溝正史「一九四八年度の課題」より） 経済大国は木ぬれ求むと足引きの 石油ピンチにあいにけるかも むささびは木ぬれ求むと足引きの 山の猟夫にあいにけるかも ヒットラーは木ぬれ求むと足引きの レニングラードにあいにけるかも 日本軍閥は木ぬれ求むと足引きの ガダルカナルにあいにけるかも 一杯亭木ぬれ求むと足引きの 華麗喀血にあいにけるかも （以上、横溝正史「むささび悲歌」より） 父来たりぬ母いそいそと子ら二人 心まろやかに眠るなりけり 天竺浪人・作 （横溝正史「病院坂の首縊りの家」より） どん栗の落ちて虚しきアスファルト（辞世の句） （日本推理作家協会会報』昭和五十七年三月号掲載） この他、椿八郎と中島河太郎が、横溝正史への追悼と して、以下のような句を詠んでいる。 秋暑しいちにち眠く眠られず （椿八郎「手紙書きの名手」 講談社『横溝正史全集月報』第五号／ 昭和四十五年五月） 麦刈って村々高く黄昏れぬ 植終へて早苗に涼し風の道 ゆく秋のすがた身にしむ草と水 山茶花やへま嗤ひあふ老夫婦 （中島河太郎「横溝先生断想」 講談社『横溝正史全集月報』第十号／ 昭和四十五年十月） |
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