横溝正史シソーラス(パイロット版) - 温故知新編 -
| 5-10 | コラム■「花瓶男」「石膏魔」「戸棚の中の骸骨」 |
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「タイトルにこだわる横溝正史」で触れた、「花瓶 男」「石膏魔」「戸棚の中の骸骨」について補足したい。 『横溝正史旧蔵資料 世田谷文学館資料目録１』（新保 博久・監修。世田谷文学館／二〇〇四年三月）に、これ ら未発表原稿の存在が記されている。 ３ 原稿 （１）横溝正史原稿 ・横溝正史原稿「花瓶男」 横溝正史 著 ペン書 400字詰原稿用紙13枚 一部欠 ・横溝正史原稿「石膏魔」 横溝正史 著 ペン書 200字詰原稿用紙53枚 ・横溝正史原稿「戸棚の中の骸骨」 横溝正史 著 ペン書 200字詰原稿用紙25枚 『横溝正史 全小説案内』（洋泉社／二〇一二年十一月） に、特別再録として「石膏魔」の未発表原稿が公表され たことは記憶に新しい。「石膏魔」とともに、世田谷文 学館に眠る「花瓶男」「戸棚の中の骸骨」などの中絶・ 未発表作品群が、日の目を見る日が近いことを信じる次 第。ここに、各作品の最初の一文を紹介したい。 「花瓶男」 今からちょうど十ヶ月ほど以前、Ｓホテルで起こっ た、あの不思議な恐ろしい花嫁虐殺事件をみなさんは きっと憶えていらっしゃるでせう。 「石膏魔」 信州諏訪市の郊外にすむ孤独な老人、永田徳平氏は よわい八十になんなんとして妻も子供もなく、孤独な 生活を送っているが、しかし、金があるとみえて、相 当豪華な、でも古めかしく、いくらか薄気味悪い家に 住み、裕福な生活をおくっている。 「戸棚の中の骸骨」 イギリスの諺に『戸棚の中の骸骨』というのがある そうでございますね。戸棚の中に骸骨を持っていると いうと、一家の秘密があるという意味になるのだそう でございます。 これら未発表原稿の存在が、著者を深淵なる横溝正史 の世界の最深部へ誘うかのようである。 |
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