横溝正史シソーラス(パイロット版) - 温故知新編 -
| 4-33 | ○獄門島ふたたび |
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石上三登志「ヨミスギ氏の奇怪な冒険８ 金田一耕助 本当に最後の事件｣（「奇想天外」昭和五十三年十一月 号）というエッセイ作品をご存じだろうか。 「「病院坂の首縊りの家」の結末で語られる、金田一耕 助の放浪の理由がもう一つ物足りない」と語る石上氏。 その話を聞いていた老人が、「「金田一耕助最後の事件」 と題された「獄門島ふたたび」は、二段組み四三二ペー ジの超大作（分量は「病院坂～」と同じ）で大傑作だ」 と説明する。小説ではなくエッセイだが、なかなかユニ ークな作品なので、概要と読みどころを抜粋して紹介し たい。 ・「金田一耕助最後の事件」は大傑作。横溝作品として どころか、探偵小説そのものとしても……。 ・トリックはすごいし、犯人がとび切り意外。 ・かつての事件後、獄門島に一人の老人が移り住む。 ・事件は、その老人の館を中心に発生し、館自体が密室 を形成している。 ・その老人が疑われ、そこで金田一耕助が獄門島にやっ てくる。 ・物語の約２／３で、老人の正体が誰か分かる（老人＝ 由利麟太郎）。 ・以降、金田一耕助と由利先生の壮絶な推理競争となる。 ・密室トリックは、ディクスン・カーの「ユダの窓」や 「皇帝の嗅煙草入れ」を凌駕する。 ・由利先生の死。名探偵と名犯人の知的対決。 ・そして〝最後の事件〟らしい幕切れが……。 ・トリックとドラマとが一体となっている素晴らしさ。 ・名探偵を二人も生み出した横溝正史だからこそ出来る 技（一方が名探偵、他方が名犯人）。 いやはや、なんとも面白い趣向のエッセイである。 「金田一耕助最後の事件」であると同時に「由利先生最 後の事件」にもなっている。残された鬼頭早苗や由利先 生の奥さんに関する説明がなく、二人の行く末が心配で ならない。知的対決に勝利した金田一耕助だが、由利先 生に自分自身の未来の姿を垣間見てしまい、名探偵稼業 にいや気がさして放浪の旅に出た。金田一耕助がアメリ カへ旅立ってしまう理由が、「病院坂の首縊りの家」よ りも具体的で説得力がある。 二大探偵最後の事件となる「獄門島ふたたび」、小説 化されることを切に願う次第である。 |
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