横溝正史シソーラス(パイロット版) - 温故知新編 -
| 2-28 | コラム■角川文庫未収録「迷路の三人」の迷走 |
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「迷路の三人」は、角川文庫未収録作品である。 中島河太郎「由利先生の事件簿」（「野性時代」昭和 五十七年四月号収録）に、その理由が記されている。同 様の記述は、中島河太郎「白髪の怪人と花形記者 由利 先生・三津木俊助の事件簿」（『名探偵読本８金田一耕 助』パシフィカ／昭和五十四年十一月）にもある。 ⑮「迷路の三人」（昭12・８増刊、キング） 幽霊屋敷探検に出かけて迷路で殺された女性の近く にいて、つかまったのが脱獄囚だった。屋敷の近くに いて悲鳴を聞いた由利先生が取り調べに手を貸すが、 その最中に脱獄囚まで殺される。継母子間の疑惑を中 軸にしたもの。作者が翻案だというので文庫に未収録。 由利・三津木もの全三十三作品を読破するためには、 中絶作「神の矢」「模造殺人事件」を除くと、『横溝正 史探偵小説コレクション１ 赤い水泳着』（出版芸術社 ／二〇〇四年四月）に収録されるまで、「迷路の三人」 が最大のネックとなっていた。同書の巻末解説に、「迷 路の三人」の文庫収録が見送られたのは、海外作品の翻 案だからだとされているとし、その注記欄に、「創元推 理文庫『ソーンダイク博士の事件簿Ⅰ』の７話、同『エ ラリー・クイーンの新冒険』の４話が該当する。ともに 「迷路の三人」以前に翻訳があった」旨、記されている。 「迷路の三人」を収録した近刊、柏書房『由利・三津 木探偵小説集成２ 夜光虫』（二〇一八年十二月）の巻末 解説にも、同様のことが記されている。 「迷路の三人」は「キング」に発表（略）。著者自身 が中島河太郎氏に「あれは翻案だよ」と語ったことが あるため、角川文庫版の作品集には収められていない。 迷路の中での殺人事件シチュエーションからは、エ ラリー・クイーンの短編「暗黒の家の冒険」（創元推 理文庫『エラリー・クイーンの新冒険』所収）が元ネ タとも思えるが、（略）。 角川文庫未収録ではあるが、「迷路の三人」を収録し た刊本は『横溝正史探偵小説コレクション１ 赤い水泳 着』より前にもいくつもあった。とはいえ最も近くて、 桃源社『獣人』（昭和五十二年八月）であり、筆者は図 書館で同書収録の「迷路の三人」を読んだ記憶がある。 |
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