 『乱歩を探して』 後藤隆基, 立教学院, 2024/3/28, 本体2,200円+税 | |
内容項目は次の通り。
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立教大学のサイトに、本書刊行の経緯が記されている。 立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター(旧江戸川乱歩邸)では、立教学院が創立150周年を迎える2024年が江戸川乱歩の生誕130年にあたることから、乱歩に所縁のある方々や、乱歩やその作品を愛する方々をゲストに迎え、乱歩邸応接間でインタビューや作品の朗読を収録し、配信してきました。本書では、これらのインタビューをウェブ掲載時から大幅に加筆し、1冊にまとめています。 『乱歩を探して』に、横溝正史を探してみた。少なからず、横溝正史に関する記述を見つけることができた。 ■美輪明宏 理想の明智小五郎を探して 美輪明宏さんは、横溝正史よりも江戸川乱歩の作中探偵がお好みらしい。 探偵小説の作家では、横溝正史さんもいらっしゃるけれど、あの人の探偵は野暮ったくて、舞台も田舎の豪族の家だったり、都会的じゃないんです。だから、あまり好きじゃなくて(笑)。その点、江戸川さんのものは好きでした。退廃的でね。まさかお会いするなんて思いもしませんでしたけれど。 私事だが、舞台「黒蜥蜴」を、2005/4:ル テアトル銀座(美輪明宏･高嶋政宏)と、2018/1:日生劇場(中谷美紀･井上芳雄)の2回観劇している。 ■齋藤雅文 乱歩の小説の謎を追いかける旅 乱歩から横溝正史へ ――乱歩に続いて、新派で横溝正史を劇化されていきます。乱歩と横溝の違いをどうお感じですか。 齋藤 乱暴に言うと、社会性の違いかもしれません。『犬神家の一族』(大阪松竹座･新橋演舞場、2018年11月)や『八つ墓村』(新橋演舞場、2020年2月)を脚色したときは、結末を書き換えて、小説とは違う形になっていますが、横溝作品は社会の矛盾と向き合っているんですね。それが凝り固まって大量殺人になる。社会に対する不信感と怒りが横溝さんの中にあって、ご自分が体を悪くして動けない中で、戦中戦後を岡山で過ごしている間の怒りのエネルギーといいますか、それは、やっぱり戦後のものだと思いますし。 
舞台『八つ墓村』は、コロナ禍で中止になる直前に新橋演舞場で観劇した記憶がある。
公演プログラム収録の『「八つ墓ムラ」の謎に挑む』で、脚色･演出の齋藤雅文が次のように記している。小説の行間より沢山のイメージが湧き上がりました。皆で、生の鳴物を入れた「八つ墓神楽」を作り、美しい山里の住人の喜怒哀楽を、新派らしい情緒を大切に創作致しました。自由な脚色をお許し下さった横溝家ならびに角川文庫様、関係各位に深く謝意を申し述べます。「血も涙もある」犯罪者の物語です。 ■二代目 喜多村緑郎 歌舞伎と新派を応用した新しい乱歩劇の夢 舞台『八つ墓村』で、金田一耕助/要蔵/久弥を演じられました。 緑郎 ええ(笑)。『犬神家の一族』(齋藤雅文脚色･演出、大阪松竹座･新橋演舞場、2018年11月)のときには気づかなかったんですが、『八つ墓村』(齋藤雅文脚色･演出、新橋演舞場、2020年2月)では田治見要蔵と二役だったので、早替わりで大変だったけれど発散できる部分があった。だから、いま言ったような金田一耕助のポジションがわかったんです。『八つ墓村』冒頭の石倉三郎さんがなさった刑事とのやりとりなんか、まさにそうですよね。劇の所々で「僕が出て来たからには、ここから何か始まるんですよ」と、お客様をだんだん物語ののかに引き込んでいく。で、あとは他の役者さんたちにやってもらって。自分が舞台に出ていないとき、鞄にお茶を置いて袖から眺めながら、そういう役だなと思ったんです。 新橋演舞場で観た、舞台『八つ墓村』でのこと。キャストを何も知らないまま一幕を見て、「あれっ？」と思い、幕間に公演プログラムで配役を確認した次第。喜多村緑郎が金田一耕助/要蔵/久弥の三役を演じていたとは…。二幕では、要蔵/小竹/小梅の鬼気迫る演技に見入ってしまうとともに、小説の行間を読むとは、こういうことなのかと痛感させられました。横溝正史は『八つ墓村』の作中に、要蔵の語られざるエピソードを忍ばせていたのですね。 ■河合雪之丞 女方にとって憧れの黒蜥蜴 舞台『八つ墓村』で、森美也子を演じられた方ですね。 ――乱歩はいったん途切れて、横溝正史原作の『犬神家の一族』(齋藤雅文脚色･演出、大阪松竹座･新橋演舞場、2018年11月)と『八つ墓村』(同前、新橋演舞場、2020年2月)が上演されます。乱歩の『黒蜥蜴』をさまざまなバリエーションで上演されて、そのあとに横溝正史をやることは、乱歩との入り方の違いなどはおありでしたか。 雪之丞 そうですね。奇異のタイプが違うじゃないですか。横溝先生のものは現実的な話だから、結末がわかっている話をわざわざやるわけですよね。だから、齋藤さんはどうやってこれを舞台で見せるのかと、大変なご苦労だったと思います。ただ、『犬神家の一族』も『八つ墓村』もよくできた作品で、お客様も喜んでくださったし、演劇界にちょっと新しいジャンルというか、新橋演舞場という大きな劇場に、新派ならではの新しい方向性をしめすことができたのではないでしょうか。 舞台『八つ墓村』関係で、脚色･演出の齋藤雅文、金田一耕助/田治見要蔵役の喜多村緑郎、そして森美也子訳の河合雪之丞のお三方が、本書で江戸川乱歩を語りながら横溝正史も語っておられて、感無量でした。今さらながら、新派公演『犬神家の一族』(2018/11, 大阪松竹座/新橋演舞場)を、都合がつかず観劇できなかったことが悔やまれる。 
このところで、新派公演『犬神家の一族』の公演プログラムを入手できた。こちらに収録の『「犬神憑き」の人々』で、脚色･演出の齋藤雅文が次のように記している。やはり、観劇したかったと思うこと然り。「犬神憑き」というもの言いがある。関西の方の言い伝えで、犬神という邪悪なもののけが人や家にとり憑くのだそうだ。狐憑きとは少し違って、憑依した人の意をおしはかって他の人に害を及ぼすという。この犬神の憑いた家は犬神筋と呼ばれ、婚姻を嫌がられたというから、古代から生ずるある種の差別意識の発露なのであろう。兵庫に生まれ、岡山での暮らしの長かった横溝にとって、身近な伝承だったのかもしれない。 関連ページ： ・横溝正史関連ニュース&トピックス 2020/2/23付 新派特別公演『八つ墓村』を観劇！ | |
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さて、次回の「ほぼ週刊・本棚から横溝正史」は…。 キーワードは「？？？」です。お楽しみに！ |
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