- ほぼ週刊・本棚から横溝正史 -
 『黄色い部屋はいかに改装されたか？ 増補版』 都筑道夫, フリースタイル, 2025/11/15二版, 本体2,000円+税 | |
内容項目は次の通り。
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単行本の『黄色い部屋はいかに改装されたか？』は、雑誌連載の「黄色い部屋はいかに改装されたか？」(「ハヤカワ･ミステリ･マガジン」1970/10-1971/10)と「私の推理小説作法」(「ハヤカワ･ミステリ･マガジン」1974/4-1974/12)を収録して、晶文社より1975/6に刊行された。さらに、その新装版が同社より1998/4に刊行された。当方が把握していた情報はここまでであった。
このところ(2025/10)で、偶然書店でハヤカワ･ポケット･ミステリサイズの本書を見かけ、奥付で『黄色い部屋はいかに改装されたか？』の増補版が、2012/3にフリースタイルより刊行、その第二版が目に留まった次第。 当サイトでは、「横溝関連文献検索 - キーワード集 -」の「作品評論」で本書の横溝正史関連箇所を取り上げたのみで、紹介したつもりでいたようである。1998年刊行の新装版までは把握していたのですが、増補版が2012年に刊行されていたことに、このところでようやく気づいた次第。不覚の致すところ。 本書では、横溝正史作品の論評として、「本陣殺人事件」「悪魔の手毬唄」「獄門島」「犬神家の一族」「蝶々殺人事件」が取り上げられている。 「11 盗作のすすめ」の「ユダの窓は油断の窓」に、以下の記述がある。 「茶色の服の男」の手は、横溝正史も「蝶々殺人事件」でつかっています。「茶色の服の男」を知っていて、つかったのではなく、「アクロイド殺人事件」のヴァリエーションを考えて、おなじところに到達してしまったのでしょうが、知っていてつかったところで、いっこうにかまわない、と私は思います。 横溝正史「蝶々殺人事件」は、ドゥーゼ「スミルノ博士の日記」、ペルツ「裁きの日の主」や、クリスティ「茶色の服の男」「アクロイド殺人事件」のヴァリエーションの一つと考えられているのですね。勉強になります。 重箱の隅だが、参考文献リスト《A 都筑道夫自身による文章･座談》の「仮面舞踏会」の項に、「辛味亭事苑」→「辛味亭辞苑」という誤植がある。「辛味亭事苑」は、「キネマ旬報」1969/11-1971/1に連載され、『目と耳と舌の冒険』(晶文社, 1974)に収録されている。その後、「キネマ旬報」1980/1-1982/3に同題の連載があるようである。 個人的には、「仮面舞踏会」に関する評論も、この増補版に収録していただきたかった。なんといっても、都筑道夫節が随所に炸裂しているのである。 「仮面舞踏会」のプロローグに対してからして、こうである。 プロローグは旧軽井沢の山中で、若い男女が心中しようとする場面だが、この二人の会話の古くささに、まず私は閉口した。これが横溝さんの作品でなかったら、私は投げだしていたかもしれない。 そして、エピローグに対しても。 そのあとにエピローグがついていて、真犯人の最後が語られるのだが、この場面の若者の会話がまた、プロローグどうよう古めかしい。若者をえがいても、育ちのいい青年たちの会話には、べつだんおかしなところはないのに、主要人物、点景人物にかかわらず、ぞんざいなことばをつかう若者が出てくると、とたんに金田一耕助が人形佐七の世界へ迷い込んだような、感じになってしまうのだ。 横溝正史作品への総評として。 この作品を足場にして、これまでの横溝さんの作品をふりかえってみると、けっきょくメロドラマの名手ということになるのでは、なかろうか。 『黄色い部屋はいかに改装されたか？』増補改訂版の刊行を祈念したい。 関連ページ： ・「横溝関連文献検索 - キーワード集 -」「作品評論」 | |
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さて、次回の「ほぼ週刊・本棚から横溝正史」は…。 キーワードは「？？？」です。お楽しみに！ |
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