|
2021年6月から、柏書房より『横溝正史少年小説コレクション』全7巻の刊行が始まる。
その収録作品のうち、第7巻に「南海囚人塔」がリストアップされていることに、驚かされた。チラシには、単行本に収録されることのなかった幻の作品『南海囚人塔』を、ほぼ完全に復元！！と記されている。 さらに、柏書房のツイッター(2021/6/3付)で、最新情報では…。 「そして朗報！帯の「横溝正史少年小説コレクション」全巻ラインナップの 第７巻にご注目。そうです、未発見だった『南海囚人塔』の欠号を入手、 初単行本化・完全版としてお届けできることになりました！！ 収集にご協力いただいた方々に感謝です。ということで年末まで続く全7巻、 どうぞお楽しみに！ 「南海囚人塔」は、雑誌発表後刊本未収録の横溝正史ジュヴナイル作品です。 本作を読むためには、発表誌『少年少女譚海』に当たるしか、その術がなかった。 発表･連載されたのは、1931(昭和6)年のこと。戦前の雑誌連載であり、探求難易度のハードルは高く、掲載誌に巡り合う確率は、極めて低いと言わざるを得ない。公共図書館などで蔵書検索しても、『少年少女譚海』自体を所蔵している館がヒットすることは極めて稀で、あったとしても、連載分を全号揃えている所など皆無の状態。全編を通読するのが、困難な横溝作品こそが「南海囚人塔」であり、1970年代にはその存在が周知されながら、読むことが叶わない、横溝書誌上類を見ない難関作品だった。 私が、横溝正史書誌調査に際し拠り所とする文献は、次の刊本に収録されており、敬意を込めて「中島リスト」「島崎リスト」と、個人的に呼称している。今までもこの両リストは、私の横溝正史書誌調査の羅針盤となっており、これからもそうあり続けることだろう。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
・『新版横溝正史全集18 探偵小説昔話』 講談社, 1975/7 中島河太郎 「作品目録」 (中島リスト) ・『別冊幻影城 横溝正史』 絃映社, 1975/9 島崎博 「横溝正史書誌」 (島崎リスト) 『『少年少女譚海』目次･解題･索引』(中川裕美-解題, 金沢文圃閣, 2010/4)によれば、「南海囚人塔」は、雑誌『少年少女譚海』1931(昭和6)年1月号〜8月号にわたり、 計8回連載されていたことが、判明している。しかしながら、 「南海囚人塔」に関し、1975年当時の情報として、それぞれのリストには、次のように記されていたのである。横溝書誌の、ミスディレクションの一つと言えよう。 ・中島リスト：昭和6年 1 南海囚人島 (少) (―7) 譚海 ・島崎リスト：昭和6年 南海囚人島 譚海1→7 そうなのである。両リストとも「南海囚人塔」について、二つの誤謬がある。 まずはタイトル。「南海囚人塔」ではなく、「南海囚人島」と記載。 次に連載誌名の「少年少女譚海」は良しにして、その連載期間。昭和6年1月号〜8月号が、1月号〜7月号と、ひと月短い書誌情報だったのである。『少年少女譚海』の該当号を見るまで、「南海囚人島」と思っていたのは、私だけではないだろう。「南海囚人塔」に関する二つの誤謬があったが、両リストなくして、当サイトの各コンテンツはあり得なかったのだから、その偉業には感謝しかない。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
柏書房のツイッター(2021/6/3付)で、
未発見だった『南海囚人塔』の欠号を入手、初単行本化・完全版としてお届けできると言っている、欠号とは、おそらく『少年少女譚海』1931(昭和6)年3月号のことと思われる。 「南海囚人島」連載時の各回タイトルと章立ては、次の通り(連載第3回分が欠号となっていますが…)。柏書房『横溝正史少年小説コレクション』第7巻、『南海の太陽児』の刊行が待たれる。1975年から待ち続けて46年。それに比べたら、「南海囚人塔」を通しで読書できる日は、もう間近である。
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
[資料提供：論創社/柏書房] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 横溝正史に関する情報をご存知の方、 ぜひお知らせください。 |
 横溝ペディアへ |
 WANTEDへ |
 ページの先頭へ |