「女の墓を洗え」「千社札殺人事件」と…
「女の墓を洗え」「千社札殺人事件」と…
- 想像しい考察 (Apr/6/1999 Revised) -

- 『悪霊島』後の執筆予定 -

ここからは、ブレインストーミングの要領で、自由な発想をして考察を展開してみたいと思います。 連想を行うため、以降肯定文を使って記します。

まずは『悪霊島』後、第一作=「女の墓を洗え」から。
文献などから、この事件に関する情報はおよそ次のとおりです。
 ・等々力警部物
 ・金田一耕助と等々力警部がライバルになって、等々力警部の
  検挙した犯人を、耕助が疑問をもって調べだす。
 ・原案・クリスティ「杉の柩」
 ・昭和四十三年?
 ・横溝正史もいくらか関係した
 ・1981/新春号より連載予定
 ・舞台は成城
 ・神門一族の冤罪事件(候補として有力)
 ・成城にある有名な歌舞伎俳優が住んでいて、
  その江戸時代にまで遡った祖先の怨念から殺人事件が起こる

こんなに「女の墓を洗え」についてわかっているのですね。
『悪霊島』以降の事件(昭和4x年)のようですが、設定年代や内容に不詳部分がありますので、次のように考えてみました。

1)「祖先の怨念から殺人事件が起こる」ことから『八つ墓村』を連想。
2)『八つ墓村』での、毛利元就の時代,大正x年,昭和2x年と続く
 関連事件の描写と同様に、「女の墓を洗え」においても、
 江戸時代,十数年前,昭和4x年と事件がつながっていたら面白いなぁ。
3)「十数年前の事件」=「神門一族冤罪事件」と考えてもいいのでは?
4)「江戸時代にまで遡った祖先の怨念」ということは、
 「人形佐七」が絡んでいたらなおのこと面白いし、サービス精神旺盛な
 横溝正史ならばこそ、そうであってほしいと思う。
5)「江戸時代にまで遡った祖先の怨念」と、もしかしたら「佐七」も
 結びつき、時間的スケールの大きい作品プロットだったのでは?


つぎに『悪霊島』後、第二作=「千社札殺人事件」です。
文献などから、この事件に関する情報はおよそ次のとおりです。
 ・等々力・磯川両警部物
 ・東京と岡山にまたがる大事件を両警部が金田一を扶けて解決。
 ・「千社札殺人事件」……これは仮題
 ・西国巡礼に出た等々力警部が、実は定年前に取り逃がした犯人を
  追っている設定で、これにやはり定年を迎えた磯川警部が協力する

1)まずは、定年後に西国巡礼に出た等々力さんの健脚に脱帽!
2)『真説金田一耕助』の「いずれにしても等々力・磯川両警部協力物で
 さらば金田一耕助ということになるだろう…」や、
 栗本薫との対談(別冊幻影城 横溝正史IV)の
 「それで、大体それぐらいでおしまいになるんじゃないかな。」から、
 「千社札殺人事件」=金田一長編物国内(!)最終作の予定だった?
3)終わりならば、おそらく今までの集大成とすべく、
 言い残しがないよう、いろいろとテンコ盛りにするのでは?
 由利麟太郎と金田一耕助の競演も実現してほしい!
4)都筑道夫との対談によれば、
 『悪霊島』構想段階で複雑になったので二つにしたとのこと。
 そのもう一方が「千社札」ではと想像していますが?


さらにその後の執筆予定があった!
文献に書かれているものだけで、少なくとも3つあります。
 ・江戸川乱歩の中絶作品「悪霊」の続篇
  実現してほしかった!
 ・『死仮面』改稿版(!)
  1998/1に春陽文庫から、発表当時の完全版が刊行されたことは
  記憶に新しい。
 ・『金田一耕助の事件簿 in USA』が、予定されていた!
  本気でしょうか?

以上が、『悪霊島』後の執筆予定に関して文献調査を行った結果、当方にてわかった事実とその考察です。

▼参考資料
a)横溝正史『病院坂の首縊りの家』,角川書店(1978/2)
b)別冊幻影城 横溝正史IV(1977/11)収録,
 「探偵小説への見果てぬ夢」(対談vs.栗本薫)
c)横溝正史『真説 金田一耕助』,毎日新聞社(1977/12)
d)「中島梓のサインくれなきゃ帰らない!横溝正史の巻」,
  バラエティ1978/7,対談
e)角川文庫『病院坂の首縊りの家』(上) 解説
  (中島河太郎,1978/12)
f)横溝正史「金田一耕助との対話」,朝日新聞夕刊(1979/6/30)
g)中島河太郎『名探偵読本8 金田一耕助』,パシフィカ(1979/11)
 中島河太郎「金田一耕助入門」
h)『悪霊島』連載第十六回完結編,野性時代(1980/5)
i)今秀巳「慈父と作家魂と」(水谷準編『横溝正史追憶集』,1982/12)
j)山村正夫「横溝正史の創作ノート」,推理小説研究17(1983/9)
k)実吉達郎『シャーロック・ホームズと金田一耕助』,
 毎日新聞社(1988/10)
l)浜田知明「完全年譜 金田一耕助の生涯」,野性時代(1994/3)
m)『横溝正史と「新青年」の作家たち』,世田谷文学館(1995/3)収録、
 横溝亮一「父・横溝正史と世田谷」
n)横溝正史『貸しボート十三号』春陽文庫(1996/10)収録、
 山前譲/浜田知明「金田一耕助の"幻"の事件」
o)「われら華麗なる探偵貴族」(対談vs.都筑道夫),
 『横溝正史の世界』徳間書店(1976/3)

「女の墓を洗え」「千社札殺人事件」を含む『悪霊島』後の執筆予定に関し、ご存じの方いらっしゃいましたら、ぜひご一報ください。



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