- ミッキーな三津木とベティな等々力 -
 |
|
今でも絶大な人気を誇る,二大キャラクタを、横溝正史は、 昭和十一年にその探偵小説の中ですでに使っていました。 『夜光虫』(角川文庫緑304-24,絶版)をお持ちの方は、p.35をチェックしてみてください。 第ニ編のサブタイトルは、次のようになっています。 |
|
銀座裏に仮面を鬻ぐ男のこと−覆面の歌手− ミッキー･マウスとベッティー･ブープ−二重眼鏡の紳士のこと− |
|
この後、十数ページにわたり、何度も記載があります。 (p.41) 「こりゃ何んだね」と仮面をとりあげて、 「ははあ、ミッキー・マウスか、こいつは縁起がいいや。これをひとつ貰っていくぜ。ほら五十銭」 と、貨幣を一枚投げだした三津木俊助、(略)。 (p.42) 俊助はそれを見ると、持っていたミッキーマウスの仮面をつけ、 静かに階段をおりて、空いていたテーブルに陣取った。 (p.43) ミッキーマウスの仮面の下から、その様子を見てとった俊助は、(略) (p.44) 一人の男がつかつかと側へ寄って来ると、断りもせず、 いきなり俊助の前に腰をおろしたのである。顔はむろん 分からない。仮面はベッティ・ブープなのである。 両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、体を反らして 傍若無人に笑っているのだ。 俊助は、なんとなく厭な野郎だと思った。それで、 ふとテーブルから立ち上がろうとすると、 いきなりベッティ・ブープが上体をのばして、俊助の腕をとらえると、(略) (p.51) 「なあんだ、君かあ」 と、いう俊助の声に、ベッティ・ブープは肩を揺すって微笑いながら、 仮面をちょっと額のほうへあげた。 (p.52) 「馬鹿にするな」 ベッティ・ブープはにやにや微笑いながら、 「俺だってたまにゃ、ダンスもするさ、(略)」 (略) この男は等々力警部といって、警視庁の捜査課でも、目下敏腕をもって 鳴りひびいている人物である。 (p.59) 鱗次郎がはっとして向こうを見ると、ベッティ・ブープとミッキー・マウスが 人波を肩で押しわけてこちらへ近づいて来る。 (p.60) その時、ベッティ・ブープがやっと舞台の下に辿りついた。 三津木俊助がミッキーの仮面を、 等々力警部がベティちゃんの仮面を かぶっていることが分かりますね。 ミッキーマウスにご執心の三津木俊助と、なぜかベティブープの仮面をつけたままの等々力警部。 今まで私が思い描いていた二人のイメージを一新させてくれました。 微笑ましい光景ではありませんか。 ただし、全編を通じて出てくるわけではないので、ご安心を！ 横溝正史は、ミッキー・マウスとベッティ・ブープに、なにか思い入れがあったのでしょうか。 想像するのもまた楽し。 この二つのキャラクタは今でも現役のため、六十数年前に書かれた作品にもかかわらず、 きわめて新鮮に感じるのは、わたしだげでしょうか。 |
|
横溝作品に登場する人気キャラクタをご存知の方、 ぜひお知らせください。 |
 横溝クロニクルへ |
 アプローチへ |
 ページの先頭へ |